821 名前:水先案名無い人[sage] 投稿日:2013/07/15(月) 01:45:20.99 ID:4kyehBw60
わたしがひとり家の中で仕事をしていると、覆面をかぶってナイフを持った男が突然現れた。
「動くな。だまって言うことを聞け。
俺は大金を用意しろだなんて言わない。あんたの命を奪うつもりもない。
お前の持っている物でいちばん大事なものを差し出せ」
わたしは適当な物を渡してごまかそうと辺りを見回したが、そのようなものはない。
仕方がなく懐にしまっていた物を差し出した。
「なんだこのカードは? 真っ白だぞ」
「それを手にした人の美しい思い出がみえてくるという写真なんです。
あなたにも何かあるでしょう。もう一度よく見てください」
「…ありがとうございました。自分には幸せなことなんかないとばかり思ってましたが、
それがあったということを確認できました。もう強盗だなんて終わりにします」
男は去って行った。
わたしはその男のことを警察に知らせようとは思わなかった。
男は空き巣や強盗の類をやるには優しすぎるように感じたのだ。
わたしは仕事の続きを始めた。急なお客のせいで時間を使ってしまったが。
早く終えないとこの家の主が帰ってくる…